« 餃子事件と食糧安全保障 | トップページ | 2月定例県議会の焦点(1) »

2008/02/17

子育て税断念の背景と責任

強気の姿勢を崩さず「政治生命を懸ける」とまで言い切った寺田知事でしたが、子育て税の導入はさすがに断念せざるを得なかったようです。県議会の全会派から反対されたばかりでなく、県内全市町村からはそっぽを向かれ、頼みの綱の県民もわずか25パーセントしか賛成していないという有様(アンケート調査の結果)では、やはり強行突破はできなかったのでしょう。

そもそも、このような新税の導入を本気で提案すること自体に無理があったのです。私も子育て税を寺田知事が持ち出した当初から明確に反対論を唱えていましたし、昨年2月には定例会の予算総括で30分以上にわたってこの問題を取り上げ、地方税のあり方を含めて集中的に議論させていただいたことは当ブログでもお知らせした通りです。(※参照) また、その議論の中身は小冊子にまとめて県内の市町村長や議員の皆さんに送付し、子育て税の問題点を理解していただこうと努めました。(※参照

子育てというのは大変に耳障りの良い名目ですが、もともと地方税には馴染まないと私は考えます。地方税は地域の皆さんが利用する施設や機関、例えば警察や学校、消防などの公共財を維持するため、必要な費用を地域全体で負担しましょうというのが本来のあり方です。しかし、子育て税は限られた人たちの利益のため、全員がその費用の一部を負担しようというものでした。これは明らかに税の原則に反します。

この原則を捻じ曲げてまで導入を強行するのは間違いですし、ましてや地方の経済が逼迫して県民の皆さんの暮らしが大変厳しい中で増税をするのは無理があるというものです。ところが、寺田知事は私たち県議会が子育て税に反対と見るや、県民との対話集会を100回以上も開いて県民を味方に付けようとしました。さらにはアンケート調査を繰り返して県民世論を動かし、議会を包囲して一気に導入に持ち込むつもりだったようです。

その戦略は失敗に終わりましたが、どうしてそこまで執念を燃やしたのかが疑問として残ります。それはおそらく、県財政の危機的状況が背景にあると私は考えます。

■税収不足を補う増税

皆さんもご承知の通り、県の借金はとうとう1兆2000億円を超えました。一方、貯金(地域振興基金など)は使い果たして底を尽こうとしています。そして今後、毎年の予算を組むのに200億円以上も不足するのです。県職員の給料や県議の報酬をカットしたもこの財政難を乗り切るためでしたが、それでも足りないからこそ増税に固執したのではないでしょうか。

そもそも、議会に初めて子育て税を提案した際は100億円以上の税収を見込んでいました。ところが議会が即座に反対したため、金額を減らして最後は20億円にまで引き下げたという経緯があります。このことからも、子育て税は財政運営の失敗を補うための増税だったのではないか―というのが率直な感想であります。すなわち、そのうち何とかなるだろうという見通しの甘さ、安易に借金を重ねてきた無策ぶりが、この事態を招いたと見るべきです。

もちろん、子育て税の提案を取り下げたからといって問題が終わるわけではありません。寺田知事が反対の声に耳を貸さず、子育て税の導入のため2年半以上にわたって執念を燃やし続けた結果、多くの労力が無駄となりました。この損害をどう考えるべきかです。100回以上に及んだ県民との対話集会、県民を対象に行った3度のアンケート調査、県の総合審議会における検討、全庁を挙げての取り組み。議会や県民を巻き込んでの議論。ここに費やされたコストを金額に換算したら、いったい幾らになるのでしょうか。

21日から県議会の定例会が始まります。ここで野党(特に過半数を占める自民会派)が寺田知事のギブアップに満足し、2年半も議論を引っ張った責任を黙って見過ごすとは思えません。一方、寺田知事はこの窮地をどう切り抜けるのでしょうか。県知事選を1年後に控えた時期とあって、県民の皆さんも何か大きな動きがあるのではないかと予測しているようです。ただし、寺田知事の政治的求心力がこの子育て税の問題で大きく低下しているだけに、これまでのように世論を味方につけるのは容易でないと思います。

|

« 餃子事件と食糧安全保障 | トップページ | 2月定例県議会の焦点(1) »

「経済・政治・国際」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/21420/10585695

この記事へのトラックバック一覧です: 子育て税断念の背景と責任:

« 餃子事件と食糧安全保障 | トップページ | 2月定例県議会の焦点(1) »