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2008/03/16

武藤氏の総裁昇格に思う

国会が日銀の総裁人事で揺れています。民主党はなぜ、武藤敏郎日銀副総裁(元財務次官)の総裁昇格に反対しているのか、国民の皆さんはあまりご存知ないようです。おそらく、このブログを熱心にご覧になっている読者の皆さんの中にも、分からないという方がいらっしゃるのではないかと思います。

実を申し上げると、私自身も深く理解しているわけではありません。しかしながら、この件へのお問い合わせを多数いただいておりますので、私なりに解説してみたいと思います。

まず、財務省と日銀との関係性に注目する必要があるようです。一般から見れば、どちらも国の機関であり、一体と思われているかもしれません。確かに、それはその通りであります。しかし、財務省は国家の財政を司る機関であり、一方の日銀は金融政策全般の総元締めというべき組織です。

分かりやすいのは、例えば「金利」における両者の関わりです。金利(公定歩合)が上下するのは、日銀が景気の動向を見極めながらコントロールしているためです。経済全般の動向を分析しながら、通貨(お金)の供給量を増やしたり、減らしたりします。国内にお金が出回りすぎるとインフレ、少なすぎるとデフレが起きるためです。

この判断が非常に難しいことは言うまでもありませんし、基本的に日銀はどこからも指示を受けずにこれらを極めて客観的に行う必要があります。ところが、一体であるため日銀が財務省の意向をうかがったり、財務省から日銀の方針に関与しがちとなっています。

これまでの日銀総裁人事を見ても、両者の密接な関係は見て取れます。日銀プロパーや旧大蔵省が総裁を務め、両者は正に一体といえます。そしてこの関係を断ち切るため、日銀法が平成10年に改正されています。この改正によって、日銀の独立性は高められましたのです。ところが、政府が新総裁に昇格させようとしている武藤副総裁は、財務省の事務次官まで務めた人物です。

当然のことながら、武藤氏が総裁となれば日銀が政府(財務省)寄りの金融政策を打ち出すのではないかという懸念が生じます。もちろん、武藤氏が副総裁として忠実に仕事をこなしてきたのは確かかもしれませんし、これまで政府寄りの発言をしたことさえない、という意見もあります。

もう少し、具体的なお話しをします。今、政府の短期・長期の国債(国の借金)は800兆円を超えています。毎年、この借金を返すために借り換え債の発行と単年度の予算編成で必要な国債の発行額は莫大な金額となっています。単年度分だけでも30~40兆円を発行しなければ、その年の約82兆円余の予算編成ができないという現実があるのです。

この国債は、国内の銀行や証券会社が大量に引き受けています。また、国民年金や社会保険などの資金も彼らに買われているのです。日銀自体も大量の国債を引き受けていますが、政府にとってこの利払いが大きな負担となっていることはお分かりいただけると思います。したがって、政府にとって金利は安ければ安いほど都合が良いわけですから、できる限り日銀が金利を低く抑えることを期待します。

小泉政権の時代、福井俊彦総裁の下で日銀は何回となく金利引き下げ策を取ろうとしましたが、ことごとく失敗に終わりました。その背景には、国債を大量に抱える政府の意向を無視できないという事情があったのだろう―という見方も存在します。そして、民主党は低金利政策によって、本来国民が得るべき利益(300兆円ともいわれています)を失ったと見るのです。

もし、武藤副総裁の総裁昇格が現実のものとなれば、財務省に斟酌した金融政策を取り続けるという懸念は拭いきれません。民主党がなぜ今回の人事案に反対し続けるのか。理由はそこにあると私は考えています。

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