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2008/11/25

不安に満ちた現代社会

毎日のように凶悪な事件が発生する中、厚生省のトップである事務次官の経験者2人が狙われ、尊い命が奪われるという異様な犯罪が起きました。これは正に「恐ろしい」という以外に言葉が見当たらず、暗くて不安に満ちた時代の再来を感じずにはいられません。

昭和4年、アメリカで引き起こされた経済恐慌はたちまちのうちに世界を飲み込み、日本でも多くの銀行や大企業がバタバタと倒産しました。職を失った人々が街に溢れ、国民を不安のどん底に落とし入れたのです。こうした中、右翼団体の構成員や軍の急進的な若手将校によって、政界や財界のトップが次々と殺害されるというおぞましい事件が多発しています。

昭和5年11月、浜口雄幸首相が東京駅で右翼団体・愛国社の佐郷屋留雄男に狙撃されて重傷を負ったのを皮切りに、昭和7年2月には井上準之助前蔵相が血盟団の小沼正によって暗殺されました。そして、翌3月には三井合名理事長の団琢磨も同じ血盟団の菱沼五郎によって命を奪われ、同年5月にはあの5.15事件が起きます。

この時は帝国海軍急進派の青年将校を中心とする反乱分子が首相官邸を襲撃、犬養毅首相を射殺しました。さらに昭和11年2月には陸軍皇道派の将校らが部隊を率いて蜂起し、首相官邸などを襲って高橋是清蔵相、斎藤實内大臣、渡辺錠太郎陸軍教育総監らを殺害(2.26事件)。こうした世相を背景に軍部の独走が始まり、やがて言論の自由も奪われることになったのです。

この間、政治家や政党は争いを繰り返した挙句に無力化、時代を建て直すことは叶わないばかりか、昭和8年の国際連盟脱退を経て日本が世界の潮流から外れてしまったことは、誰もが知るところでしょう。この歴史を振り返ってみた時、今の時代と重なるところがいくつもあるような気がしてなりません。

今回もアメリカに端を発した金融恐慌が日本経済を直撃し、大不況に見舞われた結果、多くの失業者を生んでいます。ところが、肝心の国政は停滞して何ひとつ前進できずにいます。政党政治に対する国民の不信がますます募る中、不況の厳しさをまるで感じていない官僚の保身にもその不満の矛先は向けられています。

時代に対する民衆の鬱憤は、最後は必ず政治に跳ね返ってくるものです。元事務次官2人を狙った襲撃事件は今のところ、政治的に深い背景はなさそうに見えますが、だからといって安堵するわけにはいきません。私も含めて政治家や官僚はこの際、こうした狂気を生む時代をしっかり見つめる必要があるのではないかと思います。

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2008/11/17

国益を損なう田母神論文

航空自衛隊のトップである航空幕僚長が、懸賞論文の中で戦前の日本が進めたアジアへの侵略政策を正当化したばかりでなく、陰謀によって日中戦争などに引き込まれた被害者だと強調したのですから、言葉を失ってしまいます。政府見解を否定し、外交問題にも発展しかねない主張をする田母神氏を自衛隊のトップに据えていたこと自体が非常識です。

いったい、日本のシビリアンコントロール(文民統制)はどうなっているのでしょうか。そもそも、田母神氏はかねてからこの持論を語っていたとされます。政府はこうした事実を見逃してきたのでしょうか。もしそうであるとしたならば、実に由々しき問題であります。

戦前の日本が中国大陸などに向けて強硬に軍を進め、満州事変・日中戦争を経て太平洋戦争へと突入し、ついには国家を破滅させてしまったことは誰の目から見ても明らかです。そして、その過程においては軍部が強圧的に政治家や官僚、経済界、マスコミなどを抑え、最終的に誰もその流れを止めることができませんでした。私たちは、この歴史を忘れてはなりません。

戦後の日本は、その過ちを反省してファシズムと決別し、平和憲法の下に新しい民主主義国家へと生まれ変わりました。政府はその都度、アジアの国々に対して謝罪し、賠償や円借款などの経済援助を行いながら関係修復に努めてきたのです。しかし、それでもなお被害を受けた国の一部には反日感情が色濃く残っています。

中曽根元首相はかつて、自著の中に「我々は親子三代、百年間はそのことを忘れてはならない」と書き記しています。田母神氏は言論の自由を主張して居直っていますが、それは中曽根元首相が戒めた過去の歴史ばかりでなく、航空幕僚長という立場がいかなるものなのかさえ忘れています。そして、その発言は今まで日本が積み重ねてきた努力を台無しにしかねないものであることさえ理解してないように見えるのです。

国会では、複数の国会議員がこの問題を取り上げています。しかし、野党議員の問いに閣僚が取り繕って答えるだけで済む問題なのでしょうか。シピリアンコントリールが機能しているのかどうかを含め、これは与野党の垣根を取り払い、しっかり検証すべきものであると私は考えます。

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2008/11/10

オバマ氏の勝利に思う

民主党のバラク・オバマ氏が圧倒的な支持を得て米大統領選で当選を果たしたという報を耳にして、私は改めて「アメリカというのはやはり凄い国だ」と思わずにはいられませんでした。と言うのも、アメリカという国は日本人が想像もできないくらい複雑な人種問題を抱える国だからです。

先祖が奴隷としてアメリカに連れて来られたというルーツを持つアフリカ系住民が、公民権の適用を求めて大衆運動を繰り広げたのはほんの50年前のことでした。今も彼らに対する差別が色濃く残る中、アフリカ系の血を引くばかりでなく、上院議員になって数年しか経っていない若手のオバマ氏が大統領に選ばれた理由はどこにあったのでしょうか。

オバマ氏の演説を聞いていると、国民の熱狂的な支持の中で大統領となったジョン・F・ケネディとの共通点をいくつか見出せます。同じ民主党の若々しいリベラル派であることはもちろん、とりわけ酷似している点はメッセージそのものが歯切れ良く、強く大衆に訴える不思議な力を持っていることです。

例えばオバマ氏の「Change」(チェンジ)「Yes,We Can」(イエス、ウィー・キャン)という呼びかけには、日本人の私でさえ「オバマ氏はアメリカを変える」と感じてしまうほどの説得力があります。ブッシュ政権に対して不安と不満を募らせているアメリカ国民はなおさら、オバマ氏の訴える「Change」=変革に期待したのでしょう。

イラクとアフガニスタンという2つの戦争を抱え、アメリカの国力が衰えつつある時、資本主義の象徴であった巨大証券会社が突然潰れ、金融不安が急速に広がっていました。さらには国内の貧富の差は拡大し、多くの国民が貧困に喘いでいます。彼らの「今のアメリカを変えて欲しい」という切実な思いが、オバマ氏の勝利につながった――と私は考えるのです。

では、オバマ氏は今のアメリカが直面しているこれらの課題を解決できるのでしょうか。そして、アメリカは再び繁栄と自信を取り戻せるのでしょうか。

1929年(昭和4年)にアメリカの株式市場から始まった株価の暴落が、大恐慌となって世界を巻き込んだことを思い出してください。時の大統領ハーバート・C・フーバー(共和党)は事態を楽観視して、何ら解決策を示すことができませんでした。そして、次の大統領選で新たに選ばれたフランクリン・D・ルーズベルト(民主党)がニューディール政策を打ち出し、アメリカの経済を大恐慌のどん底から回復させることに成功しています。つまり、アメリカ国民は1人の大統領によって大きな変革を成し遂げ、繁栄と自信を取り戻すという歴史を経験しているわけです。

ルーズベルトは人間的な魅力も豊かな人物であり、相手の心理を見抜くという点において比類なき洞察力を発揮したと、時の国務長官コーデル・ハルは述べています。一方、オバマ氏はルーズベルトとは違う何か神秘的な魅力を持っているように見えます。私自身は彼ならきっと「Change」をやり遂げ、アメリカの歴史に名を残す大統領になるであろうと思うのです。

アメリカ同様、直面している数々の難局を乗り切って国民が"幸せ"を実感するためには、日本の政治も大きく変わらなくてなりません。果たして、私たちに「Change」の機会はいつ訪れるのでしょうか。

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2008/11/04

解散の先送りと経済対策

衆議院の解散は結局、先送りとなりました。10月解散、11月選挙は与野党とも暗黙の了解でしたから、政党も候補者も皆走っていたのです。にもかかわらず、選挙が来年のいつ頃になるのかも分からない状態なのですから、どこも戦略の練り直しを迫られるのは必至と言えるでしょう。

麻生首相が解散に踏み切れなかったのは、金融不安に対処するための経済対策を優先したことに加え、自民党による世論調査の結果が芳しいものではなかったことに起因するとされています。

特に世論調査については、自民党が現有勢力から100人以上も減らし、公明党と合わせても過半数維持が難しいという厳しいものであったといいます。これでは、解散を先送りして踏みとどまる以外の方法はなかったのかもしれません。今後は経済対策による成果が多少なりとも見えてくることに期待しつつ、外交面でのイメージアップを図りながら、内閣支持率が上昇するのを見計らって解散に打って出ることになると思われます。

一方、民主党は政権交代のチャンスという大魚を網の中に捉えておきながら、すくい上げたらまんまと逃したようなもので、悔やみ切れない面も多々あります。

さて、第2次補正予算についてですが、余りにも選挙を意識した「ミエミエ」の内容がいくつも並んでいます。中でも公明党から出た定額給付金については、「バラマキ」と呼ばれても仕方ないのではないでしょうか。全世帯を対象とした場合、たった1回で2兆円という巨額の予算を必要とする反面、景気回復に直結するとは考えにくいのです。この定額給付金には、自民党内からも疑問の声が出ていましたが、結局は公明党の求めに応じてしまいました。

高速道路の料金を土・祝日に限ってどんなに走っても1000円にするというのは、民主党が打ち出している高速道路全線無料という政策に対抗したものでしょう。

また、金融機能強化法の復活については、一定の評価ができます。これは地方の金融機関の貸し渋りなどにより、中小零細企業がこれ以上の危機に陥らないようにするための策ですから、地方からすれば歓迎すべきことです。

ただ、外国債を含めて有価証券の運用により大きな評価損を抱えた農林中金、1000億円もの損失を出した新東京銀行を対象とするか否かで、今後の国会で民主党と激しく対立することは避けられません。

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