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2008/11/17

国益を損なう田母神論文

航空自衛隊のトップである航空幕僚長が、懸賞論文の中で戦前の日本が進めたアジアへの侵略政策を正当化したばかりでなく、陰謀によって日中戦争などに引き込まれた被害者だと強調したのですから、言葉を失ってしまいます。政府見解を否定し、外交問題にも発展しかねない主張をする田母神氏を自衛隊のトップに据えていたこと自体が非常識です。

いったい、日本のシビリアンコントロール(文民統制)はどうなっているのでしょうか。そもそも、田母神氏はかねてからこの持論を語っていたとされます。政府はこうした事実を見逃してきたのでしょうか。もしそうであるとしたならば、実に由々しき問題であります。

戦前の日本が中国大陸などに向けて強硬に軍を進め、満州事変・日中戦争を経て太平洋戦争へと突入し、ついには国家を破滅させてしまったことは誰の目から見ても明らかです。そして、その過程においては軍部が強圧的に政治家や官僚、経済界、マスコミなどを抑え、最終的に誰もその流れを止めることができませんでした。私たちは、この歴史を忘れてはなりません。

戦後の日本は、その過ちを反省してファシズムと決別し、平和憲法の下に新しい民主主義国家へと生まれ変わりました。政府はその都度、アジアの国々に対して謝罪し、賠償や円借款などの経済援助を行いながら関係修復に努めてきたのです。しかし、それでもなお被害を受けた国の一部には反日感情が色濃く残っています。

中曽根元首相はかつて、自著の中に「我々は親子三代、百年間はそのことを忘れてはならない」と書き記しています。田母神氏は言論の自由を主張して居直っていますが、それは中曽根元首相が戒めた過去の歴史ばかりでなく、航空幕僚長という立場がいかなるものなのかさえ忘れています。そして、その発言は今まで日本が積み重ねてきた努力を台無しにしかねないものであることさえ理解してないように見えるのです。

国会では、複数の国会議員がこの問題を取り上げています。しかし、野党議員の問いに閣僚が取り繕って答えるだけで済む問題なのでしょうか。シピリアンコントリールが機能しているのかどうかを含め、これは与野党の垣根を取り払い、しっかり検証すべきものであると私は考えます。

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